「たらこスパゲティが食べたい」
朝から無性に食べたいものが決まっていることがある。
テレビでラーメン特集がやっていて、「明日のお昼はラーメンにしよう!」なら分かるけど、突然のたらこスパゲティ欲はどこから来るのか?なんなら朝ごはんの食べている時からたらこスパゲティの口になっている。
きっと神様が決めているのだろう。
「こいつ明日たらこスパゲティの口にしてやろう!」
神様のいたずらなのか、大いなる意志の導きなのか。
お昼休み、たらこスパゲティがメニューにあるお店を「確かあの店にはあったはずだけどな〜」と記憶とスマホのタッグを組んで探していく。
お店に入り、メニューを開くたらこスパゲティの文字を確認する。他のメニューを吟味する必要などない。
「たらこスパゲティお願いします」
大盛りにしたい気持ちを抑える。
炭水化物を摂りすぎて眠くならないように、また好きなものは少し足りないくらいの方が心が満たされるような気がする。
「もう食べられない〜」よりも「また食べにこよう!」くらいの塩梅の方がいい。
あとはたらこスパゲティを待つだけだ。
が。
横のテーブルに運ばれてきたオムライスに目がいく。
遠くから見てもたまごがトロふわしているのが分かる。
トロッとしているのに、ふわっとしている。
美味しそうな形容詞が2個も並べられる食べ物は絶対に旨い。
たこ焼きの「外はカリッと中はふわっと」もうまい。
デミグラスソースのパターンね。
子供の頃は絶対ケチャップ派だったけど、大人になるとデミグラスの良さが分かってくるんだよな〜。
デミグラスか〜、、、デミグラスね〜、、、、
あ〜〜オムライス食べたい!
え!?
朝からたらこスパゲティの口だったのに、ここにきて食欲は急ハンドルをかけてくる。
今からメニューを変更しても間に合うかな、まだ作ってないかな、、、。
でも、今日はたらこスパゲティって決めたから、、、。
心理学にはコミットメントという言葉がある。
決断することだ。
そう腹を決めたのだ、
今日はたらこスパゲティだと。
背筋を伸ばして武士のような気持ちでたらこスパゲティを待つことにする。
気持ちを集中させることで、途切れかけたたらこスパゲティとの繋がりを取り戻していく。
たらこスパゲティの前の静けさ。
店の装飾も、他のテーブルも、視界から消えていく。
「すいませ〜ん!オムライスお願いします!大盛りで」
なぬ!?
横に新しく入ってきたサラリーマンが静寂を切り裂く。
しかも、大盛りだと!?
オムライス、たらこスパゲティ、オムライスと。
オムライスのテーブルに挟まれてしまった。
オセロならば、黒と黒に挟まれた白はひっくり返る。
神様が試そうとしているのか?
俺のコミットメントを試そうとしているのか!?
心理学にはサレンダーという言葉がある。
流れに身を任せる、自分のやり方を手放すことだ。
俺はたらこスパゲティを手放してオムライスの流れに乗るべきなのか!?
たらこスパゲティか、オムライスか。
「生きるべきか、死すべきか、それが問題だ」とハムレットに言葉を残したシェイクスピアは同作品でこう言っている。
「人生は選択の連続だ」
皆さんも「ここはコミットメントするべきか?サレンダーするべきか?」迷うことがあると思う。
カウンセリングでも、
「彼にコメットメントするべきか?彼を手放すべきか?」とテーマに上がってくることが多い。
(※そうこれはグルメエッセイのブログではなくて、心理カウンセラーのブログなのだ。)
でも、コミットメントなのか?サレンダーなのか?
二者択一で考えると泥沼にハマっていく。
お昼休みに迷っている自分にカウンセラーとしてアドバイスするならこうなる。
コミットメントすることは「お昼休みの食事を楽しむこと」でたらこスパゲティではない。
そのコミットメントさえ出来れば「たらこスパゲティだろうが、オムライスだろうが」その選択肢にこだわる必要がなくて、サレンダーしちゃっていいよ。
目の前の食事を楽しむことが出来れば、それがスパゲティでも、オムライスでも、心も体も満たされるのだ。
あえて言葉にするとめっちゃややこしく聞こえるけど。
これを先ほどの恋愛の話に例えると、
まずはコミットメントすべきは、自分が幸せになること。
そして、「彼と付き合い続けるのか?彼と別れるのか?」その選択にこだわるのでなくてサレンダーすること。
になる。
「お前の昼飯と、恋愛を一緒くたにするなよ!別の日にオムライスを食べればいいじゃないか!?」というご意見はごもっともである。
選び直すことができない。
後悔するかもしれない。
この「後悔」という気持ちが、サレンダーも、コミットメントもハードルを高くさせる。
「後悔」を感じたくない為に先延ばし行為をしてしまう。
決断しないことであり、信頼しないこと。
サレンダーも、コミットメントも、あと回しにしてしまう。
だけど、時間だけは過ぎていくので、ジリジリと焦っていく。
その焦りから解放されたいけど、決断することができない。
その板挟みでどうしていいか分からなくなってしまう。
実は「後悔するかもしれない」はエゴの声だ。
先延ばしにするほど、エゴの声は大きくなる。
「まだオムライスに変更が間に合うかな?もうたらこスパゲティ作っているかな?」と時間に縛られていくほど、迷いも大きくなっていく。
コミットメントした後に、サレンダーはやってくる。
コミットメントするべきか?サレンダーするべきか?で迷っている時は、
「自分は何にコミットメントするべきなのか」
その前提条件に改めて向き合ってみることが大切になってくる。
本当にコミットメントするべきものが分かれば、あとは勝手にサレンダーしていける。
逆に言えば、やり方や方法にこだわって苦しくなっている時はコミットメントするものを洗い直した方がいいかもしれない。
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