恋愛

「音信不通」から「最後に会おう」を乗り越えた話

まなさん(仮名)がカウンセリングにやってこられたのは、彼と連絡が取れなくなって1ヶ月ほど経った頃でした。

付き合っている彼から「しばらくそっとして欲しい」と言われてました。彼は何を考えているのでしょうか?

最初はしばらくしたらまた会ってくれると思って待っていた。こちらから連絡を入れれば、返事は返ってくるけど、会ってくれようとしない。だんだんと返信までの時間が長くなっていく。

そして、とうとう既読は付くけど、返事が返って来なくなった。

まなさんはどうしていいか分からずにネットやSNSで情報を集めていく中で、僕のブログの記事に出会いました。

彼の伝えたかったこと

わたしの気持ちをちゃんと伝えました。長文になってしまったけど、ちゃんと伝えたくて、でも、彼の返事は『分かった、ありがとう』だけでした」

「『そっとしておいてほしい!』と言ったのに、彼のインスタを見たら、友達と飲みに行った投稿があって。これって私がもう用無しってことですよね!?なんでこんなこと出来るですか!?」

まなさんは彼への想いと怒り、どうしていいか分からない憤りを爆発させるように話してくれました。

「まなさん、彼がそっとして欲しい!と言ったのは2つの意味があると思います。まずは自分の気持ち(彼の気持ち)を「整理したい」ですね。これはまなさんも分かると思います。でも、もう一つはまなさんの気持ちも整理して欲しかったんだと思いますよ。」

「桑野さん、どういうことですか?」

彼が恋愛に積極的ではなかったこと、距離が近づくまでは優しかったのに、デートを重ねるにつれてよそよそしくなったこと。

まなさんはそれを感じとって恋愛の本や記事を読み漁ったそうです。

相手を理解する為には大切なことだったと思います。でも、相手のことを考えすぎて、「勝手に相手を変えてあげなくちゃ!」と思いすぎたようでした。

彼との出会いやデートでの話を聞いていると、その想いが強く出すぎていました。それが彼にはプレッシャーになっていたようです。

まなさんは自分の気持ちが伝わっていないと躍起になってしまいました。

相手が変わることでしか、この恋愛はうまくいかない!」

「彼はこうやっていつまでも逃げてきたから、ここで向き合わないと彼の人生が変わらない!

表面的には彼に自由を与えていたつもりでも、心の中では束縛していたのです。

彼は〇〇だから、変わってくれないと」

相手の人生を背負いすぎてしまったのです。

相反するメッセージで窮屈さを感じていた

僕はまなさんに以下のように提案しました。

う〜ん。「どんなあなたでも愛している」と伝えているのに、「あなたには変わってほしい!〇〇して欲しい!」と言うのは矛盾したメッセージですよね。

彼はまなさんに愛されて嬉しかったと思います。でも、嬉しかったけど、その相反するメッセージも受け取って、窮屈さを感じたんだと思いますよ。

本当に嫌いになったのなら、ただ離れていくと思いますよ。

彼が「そっとして欲しい」と言ったのは、愛されて嬉しかった気持ちと、窮屈な想いの間で疲れてしまったのだと思います。

だから、ちょっと心を整理する時間が必要になったんですよ。

とりあえず彼はそっとしてあげましょう!

本当に彼を大切に想うのであれば、彼の意思を大切にしてあげることです。

この状況では、まなさんは愛の言葉を彼に伝えているつもりでも、彼はプレッシャーとして受け取ってしまいますからね。

まなさん、本当に彼を愛しているのであれば、ここで一緒にまなさんの気持ちを整理していきませんか?

拒絶しているのは相手なのに!

まなさんも最初は意味が分からないようでした。

「なんで私が気持ちの整理を?拒絶しているのは相手じゃないですか!?」

まぁ、そうですよね。

でも、私たちが「相手を変えたい」!と躍起になっている時は、実は自分の心がとても窮屈な時なんです。心に余裕があるなら、相手を待ってあげられると思いますよ。

好きだから必死になったかもしれません。でも、何か得体のしれない窮屈さを心が感じていて、必死になっている可能性があるんですよね。

まなさん、その窮屈さから自分を解放させてあげてもいいんじゃないでしょうか?

「だから、彼が連絡をくれたら、窮屈ではなくなるんですよ」

でも、彼が「そっとして欲しい」と離れていったのは普通に連絡していた時期ですよね。きっと僕の予想ではこのまま彼と再会しても同じことを繰り返すかもしれませんね。

お互いに変わっていくこと

まなさんは「それなら」と自分の心を整理することに納得してくれました。

最初は「彼のためにできることがあるなら、、、」という気持ちと、半分は脅された感覚もあったでしょうね。

「同じことを繰り返す可能性がある」と。

私たちは恋愛で相手が変わればすべてうまくいくと思ってしまいます。

でも、お互いに少しずつ変化していくことで、ピッタリとハマらなかったピースが噛み合っていきます。

相手だけに変わることを求めるよりも、自分も変わった方がはやくうまくいきます。

ずっと見たくなかった気持ちが出てくる

まなさんが自分の話をしていくうちに「もっと自分の話をしたい!気持ち」と「これ以上は掘り下げたくない!気持ち」が出てくるようになりました。

過去の恋愛がうまくいかなったこと。両親との関係が悪く無いと思っていたけど、実はたくさん我慢していたこと。兄に嫉妬して競争していたこと。仕事さえ出来ればいいと思ってハードワークになったこと。

彼のことに躍起になっていたのは、心の底に隠された痛みや孤独感が出てこないようにする為でした。ずっと1人では整理しきれない想いを抱えていたのです。

こうやって文章で振り返れば、まなさんが歩みはスムーズに行ったように思うかもしれません。

でも、そこには行ったり来たりがありました。

やっぱりずっと見たくなかった感情と向き合いますからね。時間と心の準備が必要なんですよね。自分の話をしているつもりが、つい彼の話になったり、他の人の話になったりと。

それは悪いことではありません。そうやって少しずつでいいんですよ。

一気に何かを癒したり、手放したりしなくてもいいんです。

自分の為に時間をかけてあげることも大切なことですからね。

彼から当然の連絡

カウンセリングを受けだしてしばらく経った頃、彼から「最後に会わない?」と連絡がきました。

ここまでやってきたのに、なんで、、、、!?」

まなさんは突然の連絡に少し動揺したようでしたが、カウンセリングルームに来た時は落ち着いていました。

「いろいろと桑野さんと自分のことを振り返っているうちに、私がかなり焦っていて、彼を追い詰めていたことに気が付きました。そりゃ逃げ出したくもなりますよね。

このまま連絡が来ないと思っていたから、最後に会ってくれるのは、むしろありがたい気がするんです。最後になってしまったけど、彼とちゃんと向き合って話せるから」

今までのまなさんなら「相手を変えよう!」「連絡が返ってくるように!!と必死になっていたと思います。でも、その必死さはいい意味でなくなってました。

「桑野さん、彼に会う前に何かアドバイスはありますか?」

本当に自分を見せること

彼への愛を伝えることではなくて、本当のまなさんを伝えることではないでしょうか?

彼が本当に「これを最後にしたい」と思っているかもしれません。でも、それなら会わずに去ってくこともできたはずでしたよね。

なぜ、ここでもう一度会おうと思ったのか?

ちゃんとまなさんと向き合いたかったのかもしれませんよね。これからどうなるか分からないにしても、向き合いたかったんですよ。きっとね。

彼への愛を伝えてもいいですけど、まずは自分を隠さずに見せてあげでもいいんじゃないですか。

これまで自分と向き合ってきたことを話してもいいでしょうし、彼に会って何を感じているか素直に伝えてもいいと思います。

本当に最後になるか分かりません。でも、「最後」と言われたことで、踏ん切りがつくかもしれません。無理していい人や良き理解者になろうしなくていいですからね。

素直なまなさんを見せてあげてください。

難しく考える必要はありません。

まなさんはこれまでたくさん自分と向き合ってくれましたからね。

頻繁にお会いしている僕ですら変化を感じますから、久しぶりに会う彼はもっと感じるものがあると思いますよ。

やっと僕を見てくれたね。

「やっと本当の僕を見てくれたね。」

まなさんが彼に会って言われた言葉です。

「すごく好きになってくれたのは嬉しかった。でも、それはまなの理想を押し付けられている感じもしてしんどかった。それなら僕よりも他の人がいいじゃんって。

まなの期待に応えたかった。でも、一緒にいて楽しい気持ちよりしんどさが強くなったんだよね。でも、今日は僕を見てくれてる感じがする」

久しぶりに会った彼は、まなさんの様子がそれまでとかなり変わったことにびっくりして、「しばらく連絡しない間に新しい彼氏ができたんだな」と最初は勘違いしていたようです。

「桑野さん、私は何もしてないです。」

まぁ、そうですよね。そんな感覚だと思います。

すごく緊張する舞台の上に立つ時に勝手に視野が狭くなりますよね。

これと同じことは日常でも起きているんですよ。私たちが無意識に追い込んでいる緊張や恐れが影響してしまうのです。

「全部自分を見られてもいいや」「ありのままでいいや」と思えたことで、まなさんの肩の力が抜けたんですよ。

自分を隠しているときは

私たちは自分を隠している時は、本当の自分を見せてないし、実は相手のことも見えていません。その状態で相手にいくら熱心に気持ちを伝えても伝わりません。

パートナーシップのコミュニケーションのスタート地点に立ってないのです。

例えば「もう優等生を辞めたい!」と思っている子供に、「あなたを愛しているから」「あなたのことを思って言っているのよ!」と学校で頑張り続けること求めてしまっても、何も伝わりません。

親が自分のことを見てくれないまま勝手に都合を押し付けてくるのか?子供の目線から見れば分からないからです。

自分を分かってくれない親、その親のことが分からない、これではどんなに言葉を投げかけても伝わりません。

恋愛でも同じことをしてします。相手に必死に伝えているつもりでも、本当の相手も、本当の自分も見えないままコミュニケーションしているからです。

「ありのままでいる」という愛と信頼

今回、まなさんがやったことは、彼を変えようすることでもなくて、自分の愛を伝えようとすることでもなくて、ただ正直に自分でいることでした。

でも、それが彼の心を動かしました。もちろん、それまで愛を伝えてきたことが無駄だったわけではありません。

肩の力を抜いて、ありのままでいること。

そして、ありのままの彼を見ること。

それによって、今までの想いも、愛情も、行動の意味も、真っ直ぐに彼に伝わったのです。

後日談

まなさんと彼は、それが最後になることはありませんでした。

「また、ご飯に行こう」と彼から誘ってくれました。

そこからゆっくりと時間をかけて、関係を深めていきました。

まなさんは今でも定期的にカウンセリングを受けてくれてます。

何か恋愛で問題があるからでもありません。

他の問題ができたわけでもありません。

「前は彼を知りたいと思っていたけど、今は私がもっと私を知りたいから」と。

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