コラム

ルイーズブルジョワ展が素晴らしかった

東京でルイーズブルジョワ展に行ってきました。

【地獄から帰ってきたところ言っとくけど、素晴らしかったわ】

東京出張を決めた時に、この展覧にも絶対に行こうと決めてました。

(※母性と凶暴性を孕んだ蜘蛛をモチーフにした作品。)

彼女を知らない人には「なんだが不気味で巨大なものがある」と思われるかもしれません。

彼女の地獄とは何のことでしょうか。

ルイーズブルジョワとは

ルイーズブルジョワは1911年パリでタペストリー専門の商業画廊と修復アトリエの家に生まれます。

厳しい父親の態度に苦しみながら、病気に苦しむ母親を介護をしていました。ブルジョワは恐れや不安、怒り、見捨てられることへの恐怖を抱えていきます。

幼少期の傷を抱えながら、自身が成長して、子供を持つ母親になることでも、彼女は葛藤を抱えていきます。父の死後、鬱を患って精神分析に救いを求めます。

痛みや傷、孤独、愛したい気持ちと、壊してしまいたい衝動。

「芸術は正気を保証する」と彼女が言葉を残したように。

ルイーズブルジョワはそれらを創作活動を通して作品に昇華していくことで、自分の人生の形を見出していきます。

傷付いた女性性と凶暴性を孕んだ男性性の間で葛藤を抱えながら、創作を通して、再生と修復を辿ってきたルイーズブルジョワの魂に触れることができます。

なぜ、こんなにも感動したのか。

ルイーズブルジョワの初期の作品を観ていると、心が引き裂かれそうな痛みを感じるものがあります。幼少期の頃に抱えた傷をそのまま作品に閉じ込めたような、その痛みが目の前から伝わってきます。

それら作品の前で動き出せなくなること、涙が込み上げてくることがありました。

また、彼女は詩人でもあります。短いけど、研ぎ澄まされた言葉は鋭利なナイフのようでもあり、時にすべてを包む綿のようでもあります。

言葉や作品が心に刺さってきます。でも、それが痛いだけではないのは、そこに救いを求める声があるからなのかもしれません。

修復と再生の物語

ルイーズブルジョワはどこにも行き場のない怒りや葛藤、剥き出した痛みを作品に表現していきますが、そこから修復と再生の道を歩み出します。

昔の家族や自身の衣類、大切にしていたもの、それをタペストリーを作るかのようにつなぎ合わせて作品を作るようになります。(母親の職業はタぺストリーの修復業でした。)

(巨大な蜘蛛が思い出の品や大切なものを守っている)

彼女は痛みとトラウマで引き裂かれた心を、思い出と共にその傷をつなぎ合わせていきます。(「青空の修復」という象徴的な作品があります)

それらの作品を通して、見ている自分の心もまた修復と再生されていくようでした。

人生は素晴らしい。

傷を抱えながらもその傷を向き合い続けたことで、光を見つけていきます。

芸術に触れること

芸術に触れることは、そのアーティストの人生に触れること。

芸術に触れることは、自分の心に触れること。

大自然の壮大な景色を観た時に、地球の偉大さとその歴史を一瞬にして感じ取り、言葉に出来ない感動を味わうように。

アーティストの作品に触れることで、そのアーティストの凝縮された人生にも触れていきます。

私たちは、自分ではアクセスできない心の扉の向こうへと、芸術に触れることで、その扉を開いていきます。

カウンセリングを通して日々感じること

カウンセラーという仕事も、目の前のクライアントさんの心に触れることです。

上手に自身の痛みや葛藤を言葉にすることができない時もあります。

何だかよく分からないけど」「自分でも分かりません」

それは、まるで言葉では説明できないアート作品のように思うのです。

何か伝えたいけど、どう伝えていいか分からない。

だから、カウンセラーである自分はそのすべてをただ受け取るように、自分の心を開いていきます。

目の前のクライアントさんの心に触れさせていただくのですから、自分の心も開いている必要があります。

ルイーズブルジョワが創作活動を通して、自身の心を修復してきたように、カウンセリングもまたとてもアーティスティクな行為だと思うのです。

ルイーズブルジョワが自身の傷と向き合い続けて、人生に光を見出していくように、私たちもまた傷付いて心を開き向き合い続けることで、光を見出していくのではないでしょうか。

カウンセリングも、人生の修復と再生の物語です。

その物語にそっと寄り添えるように、これからも芸術に触れて、心に触れていきたいと思います。

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