コラム

カウンセラーって信じてもらえない

10月28日、街はハロウィンを週末に控えてにぎわっていた。

一日中ZOOMカウンセリングをしていたので、今日は一歩も外に出ていない。

ずっと椅子に座っていた身体をほぐすために散歩にでかける。

時計の針は夜の10時を過ぎていた。

肺に冷たい空気を染み込ませながら歩く。

夜の空気が心と頭をリフレッシュさせてくれる。

「一杯飲んでから帰ろう」

お気に入りの散歩コースは夜まで空いているカフェやバーへの道筋にもなっている。

この日は先日発見した雑居ビルの2階の隠れ家的なバーへ。

カウンターに座る。

店主は一言、二言を交わして、あとは適度に放っておいてくれる。

それが居心地いい。

週末の金曜日、平日の仕事の疲れを癒すためにサラリーマンやOLがふらっとやってくる。

1日の癒しという共通の目的を持ちながら、それぞれがそれぞれの時間を過ごす。

この即席の家族のような空気感がとても好きだ。

日付を変わるころカップルが入ってきた。

2件目、いや3件目だろうか、女性はだいぶ酔っ払っている。

お店の奥にあるテーブル席にカップルが座る。

男性がメニューを片手に女性の優しく話しかけていた。

まだまだ飲み足りない彼女のためにエスコートしてきたようだった。

もしかしたら、彼女の誕生日か何か祝いごとがあったのかもしれない。

嬉しそうな彼女と優しく話しかける彼氏を微笑ましく見ていた。

彼女の視線がふいにこちらに向けられる。

その瞬間

「お兄さん!なんのコスプレですかそれ!?ハロウィンですよね!いいな〜!」

と話しかけてきた。

彼女の声量は店中を駆け巡るには十分だった。

突然の語りかけに僕が戸惑っていると店の店主も

「いや〜、ハデにきめてますよね!毎年仮装されるんですか!?」

とフォローするように言葉を足してくれた。

きっと酔っ払いの女性に話しかけられて、テンパっている僕にヘルプを出してくれたのだと思う。

ありがとう。

名前も知らぬ店主よ。

でも、違うのだ。テンパっているのは突然話しかけられたからではない。

僕がコスプレも、仮装もしていないくて、私服だったからだ。

そうハロウィンでも何でもなく、普通にコンビニや映画館に行くような「ザ!私服」だったからだ。

「いや、実はこれ私服なんですよ、、、。」

恥ずかしながら返答すると。

カウンターに座っていた他の客からも

「え!私もハロウィン用の衣装だと思ってました!!」

と驚きの声が。

店中が僕の洋服の話で持ちきりになってしまった。

なんとか私服であることを説得する。
(なぜこのような説得をしなければいけないのか?と疑問が頭によぎりながら)

コスプレでも、仮装でもないことに納得してもらえて「一目見たら忘れられない服」という称号をもらった。

僕は洋服のセンスがだいぶズレていると思う。

その昔に妻から「ガラパコス諸島にいる動物みたいだ」と言われた。

みなさんにはファッションのお手本になるようなモデルはいるだろうか?

僕にはいる。

それは沖縄にいる色とりどりの魚たち。

「なんであんなにカラフルなんだろう!」

テレビで芸能人が沖縄で釣りのロケをしていて、その色を豪華に使いすぎているボディに一目惚れした。

生物は生きるための生存戦略として「目立たない」ことを手段として選んできた。

沖縄の魚たちはその逆へと真っ直ぐに進化している。

海の中でパリコレでも行われているであろう、その派手さが何よりもかっこよく見えた。

隠れて生きるよりも、派手に生きていくその姿に人生の哲学を見たような気がした。

話がズレてしまったので本題に戻す。
僕は話もセンスもズレてしまう。

私服だということを納得してもらえると、「どんな仕事をしているんですか!?」という話になった。

きっとデザイナーなどファッション関係を想像していたに違いない。

「カウンセラーやってます」

「は!?え!?カウンセラーって?」

「心理カウンセラーです。」

「相談事を聞いたりするやつの!?」

「そうです、そのやつです」

「、、、、」

しばしの沈黙。

それは飲み込めない何かを飲み込もうとする時間だった。

チェンソーを持った男が全身にプリントされている洋服を着ている男の口から

「心理カウンセラーやってます!」なんて聞かされたら脳がフリーズするのも仕方ない。

人は見かけで判断される。

コップにコーラが入っている思って飲んで、それが麦茶だったらそのチグハグ感に脳は一瞬バグってしまう。

会話がないままカウンターでお酒を飲んでいた。

すると、女性がテーブル席からこちらに近づいてきた。

「ルールや常識に捉われない姿勢いいと思います!応援してます!負けないでください!」

と励まされたのか、応援されたのか、分からない熱いメッセージをもらった。

きっとその両方だったのかもしれない。

この出来事があった夜、家に帰ると妻はもう寝ていた。

翌日に妻と一緒に本屋を巡ってカフェに入った。

昨夜起こった出来事を話すと

「それは私服と信じてもらえないし、まさかカウンセラーやっているなんて想像もしないだろうね」

と妻。

「今日だってあなた下半身は豹柄だよ」

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