私たちは答えに辿り着いていけないことではなくて、辿り着いた答えを気付かないフリをしたまま問題を作り続けることがあります。
好きでないと気付くまでに
恋愛のカウンセリングをしていると
「私はもうずっと前から彼のことを好きじゃなかったと思います。それに気付くことが怖かっただけかもしれません」
何ヶ月もパートナーとの関係を改善しようと悩んでいたクライアントさんから、このような言葉が出てくることがあります。
心の中で何ヶ月も前に出ていた答えを受け止めるために時間も、エネルギーも、準備も必要なんですよね。
本当は嫌いな相手を好きでいようとしたり、本当は許している相手を憎もうとしたり、私たちの心は合理性という言葉だけで語ることができない側面があります。
消えない母親への怒り
もう一つ似たような例を紹介しますね。
ずっと母親を許せないクライアントさんがいました。
「自分の人生は母親のせいで思い通りにいかない、、、」
恋愛がうまくいかないことも、SNSに流れてくる他人に嫉妬することも、イライラや虚しさが湧き上がってくると、「あの母親のせいで、、、」と怒りが込み上げてくるのです。
でも、ずっとカウンセリングでお話を聞いていると、母親への怒りよりも、伝わってくるのは不安や恐れなんですよね
その恐れに本人は気付いていないようで、ある時、カウンセリングでリクエストしました。
「私は私の人生を自分で決めることが怖い」
そう口に出して言ってもらうようにお願いしました。
このセリフを僕の口から聞いた時からクライアントさんの顔がハッとして緊張感が強くなりました。そして、セリフを言おうとしても、まるで喉で何かが邪魔してつっかえるように言葉に出てきません。
口からその言葉が出る代わりに、クライアントさんの目からは涙が溢れてきました。
「その言葉の通りなんだと思います。私はずっと怖かったんです。ずっとずっと怖かったんです」
クライアントさんはその涙の理由を教えてくれました。
母親への怒りを理由にしている間は、自分の人生から逃げていられること。
何をしても母親のせいにすれば、自分は責任を負わなくていいように、誰かに許してもらえるように思っていたこと。
母親の怒りを口にすればするほど、自分が惨めに思えて、その惨めさを隠すようにもっと母親への怒りが増していったこと。
母親を許すことは、自分の人生の責任を引き受けることで、それが嫌だったこと。
「母親にコントロールされた人生だった!」とずっと怒りを抱えていたけれど、本当は自分の意思で人生を歩んでいくことが怖ったこと。
カウンセリングにやってきたのは、その本当の気持ちを一緒に受け止める相手と時間が欲しかったのかもしれません。
「本当は怖かった」と気付けたことで、クライアントさんの雰囲気がガラッと変わっていきました。
なぜ、本当の気持ちに気付きたくないのか?
「本当の私って」
そんな疑問を思春期に、または大人になって何度も自分に問いかけた方も少なくないと思います。
「本当の自分が知りたい!」
人生のターニングポイントでその答えが道を切り開いてくれる気がしますよね。
でも、私たちは本当の自分を知りたい!と思いながらも、本当の気持ちを上手に隠しながら生きてしまうものです。
向き合いたくない気持ちを隠すために、自分を騙していると言ってもいいかもしれません。
そうまでして隠してしまう気持ちは、きっとそれまでの人生観も、これからの人生もガラッと変えてしまうものなんですよね。
だから、気が付きたくない。その気持ちに気が付いたら何かが変わり始めて、何か動き出すから。
私たちは、たとえ、その先に素晴らしいものが待っていても変化を恐れることがあります。変化の瞬間にこそ、もっと不幸な形に変化したらどうしようと、最悪な未来を想像してしまうものです。
新しい学校に行って友達ができなかったらどうしよう。
新しい仕事に就いて何も役に立てなかったらどうしよう。
変わる瞬間は、それを望んでいても怖いものです。
カウンセラーができることは、その怖さに向き合う準備を優しく始めていくことと思っています。
誰かに見守られている感覚が変化の先に進ませてくれるからです。
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