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何十年も我慢してきた涙が流れる理由は説明出来ないけど

「カウンセリングって何をしているんですか?」という質問に答えるのはすごく難しい。

簡潔に答えるなら「心と頭の情報を整理すること」「我慢していた気持ちをほぐすこと」「イメージワークを通して感情を感じる」になる。でも、実際にはその言葉以上にドラマチックなことが起きている。

何十年も我慢していた気持ち、我慢していたことすら気付いてなかった気持ちが、何時間も対話を続けていく中で、小さな水泡が水の中から湧き上がってくるように突如顔を出してくる。

何時間も「感情が分からないです。」「感じられないんです」と答え続けていた人の目に涙が浮かび上がってくる。ずっと忘れていた気持ちを、出来事を、この瞬間に起きたように受け止めることがある。

カウンセリングは共同作業だ。横になってもらって、お腹にメスを入れて、悪い部分を削除するような作業ではない。根気よくキャッチボールを続けていく。

最初の数時間は手応えを強く感じられないこともある。痛みや孤独を抑圧してきた人ほど、手応えは感じられない傾向がある。

「表面的な」「普段意識している」言葉のやり取りが終わって、「もう話すことがないかもしれない」くらいになってきて、やっと普段の意識から一段階深く心に潜っていく作業に変わっていく。

それまで感じていた「もしかしたらきっとこの先になるかあるかもしれない」を手掛かりに、それまで以上にゆっくりと対話を進めていく。

早く結果を求めることも大切かもしれないけど、ゆっくりと心に潜っていく時間そのものが大切だと思っている。

「自分の心と向き合う」

言葉にすれば簡単だけど、難しい。このブログでも「自分の心と向き合ってみてくださいね」と書いているけど、それがすぐに出来れば誰も悩まないし、すべてのカウンセラーは廃業に追い込まれる。

「潜る」と書いたように、本当に水の中に潜ることに似ている。もっと奥に潜ろうとすれば、視界が悪くなることも、息が苦しくなることもある。最初から何メートルも潜れない。

でも、少しずつ「潜る」ことを繰り返していけば、以前よりも長く進めていけるようになる。

「母親との関係は以前話しました」「元彼のことはもういいです」と、同じことを話すことに抵抗が出てくることがある。でも、それは同じ話であっても「潜る」時間と深さが変わってくるから、以前は発見できなかったことが見えてくる。

カウンセリングは繰り返しの作業の中で、少しずつ深さを増していく行為なのだ。

「もうダメかもしれない」「これ以上は無理」とカウンセリングに対する怒りや不満も出てくることもある。その想いと「この先に何かあるかもしれない」という気持ちを抱えて、潜っていく。

「カウンセリングを受ければすぐに解決しますよ!」と言ってあげたい気持ちもあるし、言ってもらえた方が嬉しいかもしれない。

でも、「いつまでも付き合っていきます」「これからも一緒にやっていきましょう」という本音を隠せない。

早く結果を求めること、変わることが、「何か」に追い立てられているのならば、本当に欲しい言葉は「これかも一緒に」「いつまでも」かもしれない。

不安や焦り、結果や成績に追われてきた人が、自分の時間として、自分と対話をしていく。過ぎ去った人生を思い出していく。忘れていたこと、忘れたふりをしていたことを思い出していく。心と過ごす時間を取り戻していく。

何十年も我慢していた涙がカウンセリングルームで流れることの心理的な変化を聞かれたら、うまく説明できないし、語る必要もないのかもしれない。

でも、人間が持っている言葉に出来ないドラマチックな力があることは、カウンセリングを通して奇跡のように出会い、信じている。

「カウンセリングって何をしているのですか?」と言われたら、奇跡に立ち合っているのかもしれない。私たちの心は自分自身が思っている以上の力を秘めているし、変化を迎え入れることができる。

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